⑰修論発表後「科学体験データベース作成

理科教育

 修士論文を提出し、その翌々日からアメリカに渡り、学会発表をしました。これだけ聞くと素晴らしい大学院生活だと思うでしょうが、本当に全部行き当たりばったりで本当にヒヤヒヤの連続だったのです。何とか司会や発表を終え、気持ちよく帰ってきました。そして、2月の修論発表会も無事に済ませられ、あとは現場に戻るのみでそこまでの1ヶ月は最高の環境で学生生活を満喫できるはずでした。1泊か2泊程度の小旅行も考えながら、プランを練っていました。

 そんな気持ちで研究室に行き、片付けもしながらゆったりしていると、教授が来られ、「○○さん、ちょっといい?」と話しかけます。さすがにもう講義は無いし、講演で行かれるのなら送迎はするし、自分に頼まれても何とかできる経験は踏んでいるので何も驚くことはありません。

 「いろいろイベントに出たり、講師をしてたくさん人脈は広げられたろうし、データもいっぱい増えてきたんじゃ無いかな」。うーん、何か怪しいとっかかりです。
 「そんな科学体験の実験メニューをそのやり方とともにデータベースできたらと思うんだよね」。やばい。ここは全く予想もしなかったことだ。データベース??なんだそれ。
 「この前、○○の理事会があって、これだけ科学実験があちこちで行われ、関連書籍や冊子もいっぱい出ているのに、それらをまとめる物が無いから何とかそれをまとめられないかな」。こっ、これは私にそのデータベースを作れということなのか…。

 「ここにいくつか資料があるし、デモンストレーション物理もよく見たらそれを真似た実験もあるし、イベントの冊子もよく見て、300くらいのデータベースを作ってみてよ」。修了後の素敵な学生生活はここで終止符を打ちました。これからまずはデータベースソフトを入手し、その使い方をマスターし、そして実験名、イラスト、写真、開発者、実験材料、解説文を入力することになります。300の実験だとその項目は2000以上。3月末までに引っ越しも考えながらその作業を逆算すると毎日10時間ずつ頑張っても追いつかないことは自明のこと。「まあ、大変だけど、時間もあるだろうし、よろしく」永ちゃんの登場も何ともむなしく聞こえました。

 とりあえずまずはファイルメーカープロを入手し、解説本を買い、サンプル入力して検索できるようにするまで2週間かかりました。何とかフォームを作ってそれからデータ入力を行います。写真やイラストはスキャナで入力します。30年以上前のスキャナなのでかなり読み取りに時間がかかりました。そうやって3月中旬に一応の表紙も作り、データベースのプロト版が完成しました。それを当時のパワーブック(借り物)に入れ、それを求めている財団に持って行きました。東京です。そこでプレゼンを行い、理事会が開かれ、予算が付き、実動に向けてすぐに動きました。

 その後、私は現場に戻ったので公開に向けての詳細の設定やアップロードは他の者が引き継ぎ行いました。そこから1年後、科学体験データベースがウェブ上に公開され、それを毎月更新され、今では1000項目ものデータと動画が作成されています。30年前に教授の思いつきで始めたこの取り組みがこんな形で残ることについて先見の明があったとともに、よくまあその骨組みを作ったものだなあと今でも感心しています。

 そして引っ越しを済ませ、3月27日に新居に移り、元の中学校現場に戻ったのです。戻れば戻るですさまじい事態に直面します。それは次号でお見せします。

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